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向かい合わせに座ると恭也は偲の目を見て話し出した。
「お前が、水谷に捕まる事はこちらは分かっていた。ハッキリ言うとお前を囮にした」
偲は少しだけ驚く。
「水谷がお前に連絡を取っていたのも、お前がケータイを見つけるのも想定内だった。お前のケータイにGPS機能を付けて水谷の居場所を絞りだしたのも、俺の考えだ」
恭也は偲に近づく。
「お前を助け出すとは言え、お前を危険な目に遭わせるような囮にしてしまった。本当にすまない」
偲は恭也を見る。
「俺を嫌いになったか?」
子犬のように困った顔をした恭也に偲もまたゆっくり恭也の方に寄った。
「何を言ってるんですか。恭也さんはちゃんと俺を助けてくれました。それなのに嫌いになるわけ…」
言葉を紡ぎ出したら止まらなくなる。
「偲?」
「に、二億分、尽くしたら、俺はあなたに捨てられるのでしょ?…それは嫌だ。俺はあなたといたい。二億分チャラにしなくていいから、俺はあなたといたい」
気付くと恭也の胸の中にいた。
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