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恭也は全く平然としているが、偲はかなり驚いているようだった。
「へいへい」
「返事は一回でいいです」
そう言って浮田は部屋を出て行った。
出て行った事を見送ると恭也はゆっくり着物を直して偲の頭を撫でる。
「あいつ、俺より口悪いからなぁ」
「そんな風には見えませんよ…」
「まぁ見てくれならそうだろうな。あいつぐらいだろ、俺にあんな口きくやつ。それを見込んで若頭にしたんだがな」
偲の髪を直してやると、恭也は立つ。
「すぐ戻る。おとなしく待ってろよ。寂しくても泣くんじゃねぇぞ」
偲は顔を赤くする。
「馬鹿なこと言わないで下さい」
そんなやりとりをちょっと奥の柱の隅で浮田は聞いていた。
溜め息しかでなかった。
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