2人が本棚に入れています
本棚に追加
「な~んか、辛気臭ぇな」
大きく伸びをして、1度気分を入れ替えてはみたものの、やはり直ぐに割り切れる事ではない
時刻は16時12分
テルと別れてから僅か5分、オレは未だに広大な敷地を誇る我が校の校門にたどり着かずに1人トボトボと歩いていた
彼が何を思い何を伝えようとしていたのか
考えれば考えるほど頭の中の疑問符は増える
多分明日になれば全てが元に戻ってるだろう
そんなポジティブ思考が功を成して、ようやく自分の中の蟠りを追い払った
日はまだ高く、クラブ活動をする生徒達の活気ある声が遠くから聞こえていた
正面玄関から校門にかけて、道の両側には無数桜が規則正しく植えられ、今の時期が一番の見頃である
しばらく進むと
校門の外に誰かが立っているのが見えた
人を待ってんのかな…?
近付くにつれて、シルエットは徐々に小さくなる
おんなの子?
色彩がはっきりしてくると、その正体が中学生位の少女だということがわかった
顔を見ようと少女を覗き込むと、視線が交わりオレは思わず顔を伏せてしまった
このような事態が起こった時、思春期の男子なら少なからず、その視線に淡い期待を持ってしまうものではあるが、この場合は少し特殊であった
に、睨んでた?
数m離れた位置に立つ少女は、間違いなくオレを睨んでいた
なぜだ?
髪を掻く振りをして、もう一度盗み見た
身長は約150cmと小柄
顔は整い、髪は長くて綺麗な黒色
あれ?このフレーズどこかで…
オレの脳に昼間の橙野さんのセリフが蘇る
『ーーでも、すっごく可愛かったですよ
顔も整ってたし、髪も長くて綺麗な黒だったしーー』
…まさかねぇ
そうこうしている内に、オレは少女の脇を通り抜け、その間少女はオレを睨み続けていただけで、特に何もアクションを起こす気配はなかった
違うのか?
相手が可愛いこともあってか、少女が話しかけてこなかった事にオレは若干落胆した
最初のコメントを投稿しよう!