笑顔

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目が覚めると、時刻は午後四時を回っていた。 九時間ほど眠っていた計算になるが、それでも僕の中にはまだ仄かな眠気があった。 しかし、工藤との約束は午後五時だ。 一時間もしないうちに、彼がやって来るはずなのだ。 嫌でも布団から出て身支度を整えなければ、とても間に合いそうにない。 僕は重い頭をゆっくりと持ち上げて、ベッドの上で上半身を起こし、それから二、三度軽く首を振ってからベッドをおりた。 僕は眠気覚ましにシャワーを浴び、ついでに髭を剃った。 女の子とデートをするわけでもないので、正直に言えば、髭などどうだってよかったのだけれど、一応のマナーとして剃っておいた方がよいかもしれないと思ったのだ。 シャワーを浴び終えて浴室から出ると、時刻は既に午後四時半を回っていた。 僕は用意しておいた下着を身につけ、タンスの中から適当なシャツとパンツを取り出してそれらを着込んだ。 特別に持っていかなければならないようなものは無かったし、身なりさえ整えておけば、後は工藤がやって来るのを待つだけだった。 僕は煙草を一本くわえて火を点けた。 煙とともに、ピース特有の甘い香りが辺りに広がる。 窓の外に目をやると、相変わらずひどい横殴りの雨が降っていた。 こんな雨の日に出掛けるのは面倒な気もしたけれど、今さら断るわけにもいかない。 僕はテレビを見ながら、工藤がやって来るのを待つことにした。 ぼんやりとテレビを眺めていると、突然、テーブルの上で携帯電話が鳴り出した。 携帯電話を手に取ると、液晶ディスプレイに工藤の電話番号が表示されていた。 時計を見ると、時刻は午後五時ちょうどだった。 僕は通話ボタンを押してから電話を耳にあて、「もしもし」と言った。 「もしもし、俺だよ」 電話から工藤の声が聞こえてきた。 そして、彼は続けて言葉を発した。 「着いたよ。家の前に車を停めているから」 「わかったよ。すぐに出るから待っていてくれよ」 僕はそう答えて電話を切り、テレビを消してから玄関に向かった。 玄関を開けると、目の前に白いセダンが停まっていた。 運転席には僕と同年代の男性が座っている。 どことなく面影が残っていたおかげで、それが工藤だということはすぐにわかった。 僕が右手を軽く挙げて会釈すると、工藤も右手を挙げて応えた。
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