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(怖っ…!って言うか怖っ!!)
カッと目を見開いて、ひいっと引きつった声を出せばムスッとした強面の顔をした男の人があたしを見下ろしながら「何か用ですか?」とぶっきらぼうに口を開いた。
(こっ…殺される!!)
殺されるわけがないのだけど、あまりの恐怖にゴクリと唾を飲み込み、震える手で紙袋をあたしと男の人の間に出す。そして震える声で再度事前に準備しておいた挨拶の言葉をゆっくりと吐き出した。
「とっ…隣に越してきた宮原、です。あの……こ、これよかったら、あの…その………」
「……」
相手は男の子の平均身長よりいくらか高い。そのため必然的にあたしを見下ろす形になるのだけど……
「あ…だから、その…つ、つまらない物ですがよかったら…あの……」
「兄ちゃんお客さんなのかー?」
「なのかー?」
ああ恐怖で泣きそう、なんて思っていたら玄関の向こう…つまり部屋の奥からキャッキャッと笑い声を上げながら男の人の足元に小さな子供が二人、しがみ付いてきた。彼を兄、と呼んでいるのだから兄妹なんだろう。
「あ、女の人だー!」
「兄ちゃん兄ちゃん!もしかして兄ちゃんのかのじょってやつ?」
兄妹にしてはあまり顔(と言うか表情)の似ていない女の子と男の子が男の人の返事を待たずに色々な質問を投げ掛けてくる。
「いや、あたしは…」
「お兄ちゃんもついにかのじょ持ちかー」
「なあ兄ちゃんちゅうしたか?ちゅう!」
「……」
「あははは、お兄ちゃんてば顔真っ赤ー!!」
キャハハと子供特有の高い笑い声を上げてる子供と男の人を交互に見る。そうすれば黙っていた男の人が顔を真っ赤にして口元を手の甲で隠していた。そして小さな声で「すいません」と謝ったのだ。
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