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『今日も仕事で会えそうにないんだ。ごめんね』
そんなメールは何回目だろう。
決まってメールをこう返すのだけれど。
『お疲れ様。謝らなくて大丈夫、またメールしてね』
当たり障りのないメールを打って、私は携帯電話をベッドに放り投げた。
仕事と私、どっちが大事?
なんてそんな事、絶対に口にしない。
口にするくらいなら縫ってしまおう。
そのくらい馬鹿げた質問だ。
私も仕事をしているし、これを比べるなんて絶対に出来ない。
けれど寂しいと思う気持ちも半分くらいあるのは、ある。
メールの相手は私の彼氏だ。
ユウスケとは付き合って二年半。
いい恋人。
「はぁ……暇になっちゃったな」
午後八時、缶ビール片手に私はため息をつきながら、ぽつり、と呟いた。
私の名前はハナ。
二十六歳。
この時新たに好きな人が出来るなんて、私は少しも思っていなかった。
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