1065人が本棚に入れています
本棚に追加
ユウ君は少しムキになった顏をして。
「貸して」
ユウ君は私の手を離さず、私が左手で缶を持ってユウ君が右手でプルタブを引いた。
「――ほら、出来た」
満足そうなユウ君は歯を見せて笑う。
子供っぽくて可愛い。
私がココアに口をつけると、ユウ君は私の肩に頭を落としてきた。
そっ、と重くないように、静かに。
ガラスに私達の姿が映る。
この透明の箱の中には私達、二人きり。
この世界で、二人きり、というように見えた。
静かだけれど、静かじゃない。
鼓動が鳴っている。
ユウ君の呼吸を感じる。
騒めいた感情が、煩い。
隣のベンチにココアを置いて、ユウ君の頭に頬を寄せた。
猫っ毛が柔らかくて、シャンプーの匂いがする。
繋いでいる手はとっくに熱くなっていて、汗ばんでいて。
それでも離さなかった。
……離したくない……離れたく、ない。
最初のコメントを投稿しよう!