さよならとよろしく

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 ユウ君は少しムキになった顏をして。 「貸して」  ユウ君は私の手を離さず、私が左手で缶を持ってユウ君が右手でプルタブを引いた。 「――ほら、出来た」  満足そうなユウ君は歯を見せて笑う。 子供っぽくて可愛い。 私がココアに口をつけると、ユウ君は私の肩に頭を落としてきた。 そっ、と重くないように、静かに。  ガラスに私達の姿が映る。 この透明の箱の中には私達、二人きり。 この世界で、二人きり、というように見えた。 静かだけれど、静かじゃない。 鼓動が鳴っている。 ユウ君の呼吸を感じる。 騒めいた感情が、煩い。  隣のベンチにココアを置いて、ユウ君の頭に頬を寄せた。 猫っ毛が柔らかくて、シャンプーの匂いがする。 繋いでいる手はとっくに熱くなっていて、汗ばんでいて。 それでも離さなかった。  ……離したくない……離れたく、ない。
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