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けれどどこが落ち着いていて、私はそれを眺めていた。
私は、もぞもぞ、とユウ君の手を離して、ポケットから手を抜いた。
手のひらには若干の汗。
「……ごめん。私、手汗ひでぇ」
私がそう言うとユウ君は一瞬止まって噴き出した。
「えっ、な、何?」
「いや、だって――っ、最初と同じ事言うんだもんっ」
私ながら言うユウ君に私は困った。
最初って――あ。
「……セロ君家に行くまでの時だったっけ、ね」
休憩所の中に人が集まってきたので、私達は荷物を持って外に出た。
……そうそう。
初めてユウ君と手を繋いだ時だ。
暑いのにずっと手を繋いでたんだよね。
嬉しかったなぁ、あの時。
外に出た私達はゆっくりと私が乗る車両の番号を頼りにホームを移動する。
近くに柱に背をつけて止まった。
私が左で、ユウ君が右側。
何も言わずにまた手を繋いだ。
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