さよならとよろしく

17/24
前へ
/448ページ
次へ
 けれどどこが落ち着いていて、私はそれを眺めていた。 私は、もぞもぞ、とユウ君の手を離して、ポケットから手を抜いた。 手のひらには若干の汗。 「……ごめん。私、手汗ひでぇ」  私がそう言うとユウ君は一瞬止まって噴き出した。 「えっ、な、何?」 「いや、だって――っ、最初と同じ事言うんだもんっ」  私ながら言うユウ君に私は困った。  最初って――あ。 「……セロ君家に行くまでの時だったっけ、ね」  休憩所の中に人が集まってきたので、私達は荷物を持って外に出た。  ……そうそう。 初めてユウ君と手を繋いだ時だ。 暑いのにずっと手を繋いでたんだよね。 嬉しかったなぁ、あの時。  外に出た私達はゆっくりと私が乗る車両の番号を頼りにホームを移動する。 近くに柱に背をつけて止まった。  私が左で、ユウ君が右側。  何も言わずにまた手を繋いだ。
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1065人が本棚に入れています
本棚に追加