さよならとよろしく

19/24
前へ
/448ページ
次へ
それから私はユウ君の靴の爪先を見ていた。 「――ハナちゃん」  ユウ君は私の腕ごと、私を抱き締めた。  ――もう、無理。 我慢なんて、無理……っ。  私はユウ君の服を掴んで、泣いた。 額を合わせてきたユウ君は目に涙を溜めていて。 それを見た私は、さらに泣いた。 「……マジ、好きになって、よかった。ハナちゃん、来てくれて……ありがとっ」 「私も……よかった。好きになってよかった……ありがとう」 「――これで終わりじゃないからね」 「え?」 「ずっと好きだよ、ハナちゃん。これだけはずっと変わらないから……ね、ケータイ出して」  ポケットからユウ君は携帯電話を取り出した。 私も鼻を啜りながら携帯電話をコートのポケットから取り出す。 「……さっき、最後の言葉――」  そうユウ君が言ったと同時に、発車の笛が鳴り響いた。 「ハナちゃん」  ホームと車両。 そばにいるのに、線が引かれる。
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1065人が本棚に入れています
本棚に追加