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彼は夜11時過ぎ頃に帰宅した。
家の中の空気はここ数日続いた寒波の影響で冷え切っている。
すぐにガスストーブと部屋の電気を点けて、荷物を部屋の隅に置き、上着を脱ぐ。
それをスーツの上着と一緒にソファの上に置き、カッターのボタンを外してネクタイを緩めた。
その後冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、ソファに座った。
ストーブの熱風が足にあたり、じんわりと暖かい。
ビールのプルを引くとぷしゅっという気味の良い音が鳴る。
そのビールを一口目で半分ほど飲み、ここでやっと一息ついた。
何となくテレビを付けてみたが、特にみたい番組も見つからず、適当なチャンネルで点けっぱなしにした。
彼は残ったビールを飲み干し、また冷蔵庫に向かった。そして新しいビールを取り出し、さらに隣の棚から買い置きしてあったカップめんを1つ取り出した。
彼の会社はここ最近年末の忙しさに追われており、普段なら定時の夕方6時で上がり、7時すぎには帰って来られるのだが、最近はほぼ毎日残業をせざるを得ないほど忙しい。
帰宅するのも10時から11時の間になるということが連日続いていた。
彼は湯を入れたカップめんを机の上に置き、二本目のビールのプルを開けた。
また小気味よい音が部屋に響く。
そこで彼はあることを思い出した。
先程部屋の隅に置いた荷物から、灰色の袋を取り出した。
中から取り出したのは、緑色の透き通った液体が入った小瓶だった。
見るからに怪しげな小瓶を彼は手にとって見つめていた。
彼が今日、とある店に寄り道をして購入してきたものである。
彼は仕事帰りにあまり寄り道をする事がない。たまに寄り道したとしても、アパートの近くのコンビニやスーパーに寄って、酒や出来合いの惣菜なんかを買うくらいである。
今日も彼は残業で疲れきり、寄り道せずに帰宅して休もうとしていた。
ところが駅からアパートまでのいつも通る道がたまたま通行止めになっていたため、しかたなくいつもと違う道で帰宅していた。
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