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店内に入ると、外から磨り硝子越しに見ていた灯りは蝋燭ではなくランプだった。
中は外から見るよりは明るく、たくさんの商品が所狭しと置かれていた。
一見普通の生活雑貨や小物が並んでいるように見えるが、よく見ると見るからに怪しげな品物が殆どだった。
香水のような小瓶に入った色とりどりの液体や、動物の骨を使って作られたような首飾り、何処にでも落ちていそうな石に注連縄のように縄が巻かれたもの。
他にも人の顔にキツネの目や鼻や耳をあつらえた獸人のような仮面や、年期が入っているが、鈍い光を放つ杯など、いわゆる骨董品のような物も並んでいる。
少なくとも可愛い女性が買い物をしていくような愛らしい雑貨屋には見えなかった。
彼は商品と商品の間の細い空間を何度も行き来して、店の中を物色していた。
商品を見て回りながら彼は、どれも高そうだな、という印象を持っていたが、同時にある事実に気がついていた。
この店にある商品には、どれも値段が書かれていないのである。
それに店員らしき人物も見当たらない。
彼は商品を見る際に、同時に店員の姿も探していたが、店内で彼が自由に行き来できる場所には、人の気配が一切なかったのだ。
しばらくして彼は、再び商品を物色し始めた。
店員が不在であろうと、彼はあまり気に留めてはいなかった。
この店にある全ての物や、それが醸し出す雰囲気が、彼の心を非日常的な世界へと誘い、高揚させていたのである。
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