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店内には彼が興味をそそられるものばかりだったが、なかでも彼が一番気になった物は、色とりどりの液体が入った小瓶だった。
赤い液体、青い液体、他にも紫、黄色、緑など多様な色の液体があった。
小瓶の大きさはどれも手のひらに収まるサイズで、液体はその小瓶の中に目一杯入れられていた。
彼は始めに、赤色の液体が入った小瓶を手に取った。
小瓶をランプに翳したり、小刻みに揺らしてみた。
色の付いた香水かと考えた彼は、小瓶の蓋を開けて匂いを嗅いでみた。
しかし特に何の匂いも感じられない。
この液体は何の用途に使うものなのか。それを考えていた彼の目に、あるものが映った。
十数種類の小瓶が乗った小さな机に貼ってある白いテープだ。テープには黒い手書きの文字で「忘れ薬」と書かれていた。
「望みの物、見つかったかい?」
唐突に発せられた店員の声に、彼はすぐに小瓶を置いて振り返った。
いつからそこで見ていたのだろうか。そこには1人の男が立っていた。
身長は170cmから175cmぐらい、髪型は短髪だが、うっすらと赤く染められていて、ワックスで激しくセットされている。
顔には無精髭がのこり、レンズが丸型のサングラスをかけている。
膝から下辺りまである黒いコートを羽織り、その下からは茶色のブーツが見えた。
髭とサングラスで年齢は殆どわからないが、30代から40代ほどではないだろうか。
立ち振る舞いが老人のそれとは違っていた。
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