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オーケー、超オーケー。
自分の中にある繊細な部分を優しくレノアするようにテンションを無理やり上げて、彼女からのポイズンをポイゾナする。
俺大丈夫、超大丈夫。
正直、逃げちゃだめだって何回も思った、わらい。
そういや、今時間って大丈夫なんだろうか。
時間を確認するために携帯を開く。
七時四十五分。今からでも余裕だろう。
「あんた、時間大丈夫なのか?そろそろ行かないとやばいんじゃないか?」
「……え?」
そう切り出すと彼女は慌てて腕に付けている時計を見る。
もしかしたら、彼女に少しでも楽しんでもらえたのかな?なぁんてな。
今時珍しく、秒針が見えるほうを左手首の内側に付けていた。
赤いスウェードのような素材のベルト、黒い秒針で真っ黒のボディの時計で確認しおえると、名残惜しそうに猫をもう一度抱きしめる。
「……もうお別れなのね……キュベレイ…」
「おい!なんだよ、そのモビルスーツ的な名前は!?いつの間に!?」
彼女の口からポロッと漏れた一言に勢いよく突っ込ませて頂く。
しかも何気に高性能だし、自分の好みなタイプなんで。
てかまじ可愛らしい子猫になんつー名前つけんだよ。
あぁハマーン様、あぁハマーン様。
そうこうしていく内に、刻一刻と迫る、彼女との楽しいひと時の終焉。
「んで、どうすんだ?その猫」
「……そうね。……どうしようかしら…」
そう切り出すと、彼女の本気で悩む姿を見て、ホントに、ホントに優しい人なんだろうなと、思う。
だがそして、こうも思もった。
この先、こういった場面を見ると彼女はその度に足を止めて、その度にこうして涙を流すのか。
だったら俺は見たくない。彼女の涙をこれ以上、流させたくない。
何故なんだろうか、不思議と、自分自身でもよくわからないけど、そう思った。
そして、自分で考えついた、馬鹿な考えに、心の中でそっと笑う。
ほんとに馬鹿げた考え、だけど、その馬鹿な俺の考えで彼女の悲しみが少しでも拭えたらと思って。
「なぁ?その猫、ちょっとこっちに移動させてもらってもいいか?」
「……何?どうする気?」
「いいからいいから。悪い事しよってわけじゃないから」
「……ふーん」
若干警戒しながら、此方を見やる彼女。
本当に警戒深く、本当に猫みたいだなと改めて思う。
本の少しの逡巡を経て、漸く、彼女は此方に近づいてくる。
いやそこまで警戒されたら逆に悲しいんだけど。
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