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「……ねえ?……貴方もしかして同情してるのかしら…」
沈黙を破ったのは彼女のそんな切れ味の良い一言だった。
だけど、俺の気持ちは違ってた、そんな立派なモノでもなくて、そんな優しいモノでもなかった。
俺のキモチは、俺の本当のキモチは……
俺は陽の光を目で眩しいのを我慢して彼女から視線を外す。
照れくさくて、まるでガキみたいな俺のキモチ。
「いや、違う。俺はさ知りたいんだ……本当のあんたを…あんたのいう、本当のあんたってやつが見てみたい、かな?」
そう、俺はこの子の涙の秘密を知りたいと思った。そして。
本当の彼女がなにより見てみたかった、ただ、それだけだ。
「……そう……そっか…」
そう呟くと、辺りにはまた気まずい沈黙が流れる。
また青臭い自分の気持ちを彼女に返事をもらうとどれだけ恥ずかしい事を口走ったんだと、俺は羞恥に悶えていた。
クス。
柔らかい、シャボン玉みたいなフワフワとした調べが冬の風に乗って耳に運ばれる。
思わず心くすぐるそんな彼女の笑い声だ。
俺は先程外していた視線を彼女に戻す。
此方を見やり、上品に手の甲を口元に当てながら彼女がこちらを見ていた。何故かおかしそうに。
微かに上がった口角。そして頬。
その頬はほんのり林檎色。
ついでに鼻も、トナカイみたいに。
「ぶ!はは、ハハハ!」
吹き出すついでに彼女の笑いに乗っかってみる。なんだか想像以上にそれが楽しい。
彼女もそうなのか、微笑で此方見やり、また一段と辺りに音を震わせる。楽しげな調べで。
一人でより二人、とでもいうように笑い声がここに響く。
そんな空の天気は雪と曇り、時々晴れ。
俺達を一層楽しめるように太陽が差し込む。
キラキラとした、雪が降り注ぐ中で笑い飛ばす。
寒さもついでに飛んでほしいと、首元を手で擦りながら思う。
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