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猫は、心配そうに見上げ、額で彼女の悲しみを受け止めていてあげているように涙を受けても嫌がりもしていなくて。
ここに、優しさ、慈悲、慈愛、安堵、全てが俺の目の前にあるんじゃないだろうか。
なぜか自分でもわけがわからず、涙が出そうになった。
喉はカラカラになって、目頭が熱くなって、どうしても、彼女と一匹の姿に胸が暖かくなら目が離せなかった。
余りの衝撃に未だ身体が動かず、身じろぎ一つできなくている。
思考の回路が馬鹿になってしまったようだ。
ただただ、彼女に魅入る観客に成り伏した。
俺の近づく影が目についたのか？
シンデレラの様な彼女が、ゆっくりと此方に首を動かす。
。
彼女の黒い双眸が俺の姿を捉える。
その刹那、俺の心臓が射抜かれた。そんな気がした。
その機械の様に無機質な冷たい視線に。
まるで猫みたいに、すっと目を細め、警戒するかのように此方を見やる。
俺の射抜かれた心臓の脈がトクンと一つ高鳴る。
まるで彼女の瞳によって、再び生命の活動を始めた様に。
そして、彼女によって支配された世界が時を戻すかのように。
漸く、俺も我に帰り、意識がはっきりしたところで、また彼女を見る。
なんてーか、どこか俺には黒猫のように見えた。
孤独に耐え忍び、文字通り女の子は猫の皮を被り、この子はまるで孤高に見える黒い双眸がそう印象づけた。
指をちょいちょいと此方に動かし、ちっちっちっち、とすると、警戒心が解けるんじゃないか？
猫は大抵これでよってくるよな？
思い立つやいなや、早速やってみる。
下位クエスト受注、『黒猫を飼い慣らせ』
｢……ちっちっちっち…｣
｢……何？貴方、喧嘩売ってるの？｣
あ、すんません。
それになんというか、物騒な事をいっている声は物凄く平坦で感情がほとんど込められてない感じがするって言うか。
慌てて、手を左右に振りながらその意志が無いことをやんわり告げる。
｢いやいや、そうじゃなくてだな？あれだ、コミュニケーションだよ｣
｢……へぇ…貴方のコミュニケーションって変わってるのね？……クスクス｣
わーお、これって死亡プラグすか？
あ、あの、まだ死にたくないです。まだやりかけの積みゲーをやり終えるまでは死ねないっす。
｢……貴方、バカなの？ゲーム？……命が潰えてしまえかもしれない時に……｣
なんてこったい。
かなりお怒らせてしまった様だ。
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