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「……あんた、泣いてただろ?ホントの私って言ってた。なぁ?ホントの私ってのはなんだ?」
核心を突いた、あえて。
触れてはいけない、パンドラの箱を、愚かな人間のように。
だけど、知ってるか?最後には希望も詰まってるんだ。
俺は傲慢にも何かに、彼女の希望か何かになれたらと胸に秘めて。
そして、俺なりのに決心をして。
その途端、彼女は、ふっと、無表情に戻る。
だけどその表情の中に悲しみも含まれている気がした。
なんでかわかんないけど……そう見えた。
「……ねぇ?」
流し目で此方に目をやる。
その瞳の奥に奥に何を隠しているのか。
無性に気になりながらも、彼女の問いの続きを待つ。
「……貴方は、本当の自分を見せれる人って……いる?…」
これはどういう意味だろう。
有りのままとして本来の自分っていう事だろうか?
……多分、そうだ。
彼女のその重苦しく吐き捨てた後、押し黙り此方をそのまま流し目で此方を見やる彼女。
俺はちょっと、とりあえず、逡巡してみることにした。本来の自分とやらを見せれる奴らを考えては見るが、両親は海外に長い間住んでいるため、見せれるかつーと、そうでもないかもしれない。
たまに会うから気恥ずかしくて、どこか遠慮してしまうとこがあるし、いい子ぶってしまう自分もいるからだ。
妹にも見せれないかもしれない。やっばり良い兄貴ぶりたいからな。
幼なじみの梓はというと、なんだか、お互い素直になれないとこはあるが、でも、なんだかんだ、俺のありのままを見せれる人ってのは梓しかいないかもしれない。
俺にも、一つだけみんなにおおっぴらに言えない秘密がある。梓だけにしか見せていない事があるんだ。今は関係ないけどな。
そう、考えると不思議なもんで、思っていたよりずっと、ずっと、少なくて。
なんだか少し心が痛い気がし、胸が疼く。
ずきん。
「……そうだな、思っていたよりずっと少ないな。……一人しかいない…」
「……そう、貴方も…」
呟くように返す彼女はちょっとだけ目を見開いたみたいだ。
そんなに意外か?こう言っちゃなんだが、俺も一端の男子だ、気難しい思春期なりにやきもきしている事だってある。
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