~Day4~ another story

56/59
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
開かれたドアの内側には当然の如く拳銃がズラリと並ぶ棚が置かれていた。常日頃、出勤、退勤の度に目にする光景であるから、俺にとってはさほど珍しい光景ではないのだが、ただ、二つほどいつもと違う点があった。一つは、俺達機動隊が全員拳銃を装備の上で出動したためか、いつもより棚の隙間がいささか目立っていること。そしてもう一つが、普通ならお目にかかることのないごつい銃が、それこそ拳銃というカテゴリーには包括しかねる大きさの銃がいくつか存在していることだった。自然とそちらに目が引かれる。なぜこんなものがこんな所にあるのだろうか? 「気付いたか。こいつは、今回の作戦のために県警から支給された物でな、特殊急襲部隊、Special Assault Team、まあ、すなわちSAT御用達の短機関銃、MP5だ。」 目線に気付いたのか、警視が答えを述べた。通常、機動隊の装備でも銃器については一般の職員と変わることはなく、拳銃が支給されるものである。しかし、それは時と場合による。機動隊や、SATなどの特殊な任務に当たる者については、公安委員会が定める、警察官等特殊銃使用及び取扱い規範、という規則に基づき、拳銃以外の銃器の使用が許可されるのである。 今回の場合は、おそらく暴動の鎮圧のために配備されたものなのであろう。しかし、それと警視の策とどういう関係があるのか。まさか外の奴らに向かってどこかの元グリーンベレー隊員よろしく突貫しろというんじゃあるまいか……。疑問が口を衝く。 「警視、その銃と警視の策とやらと、どういう関係があるのでしょうか?」 「うむ。それを説明する前に、お前に訊きたい。今のこの状況をどう見る?」 質問に質問で返されてしまった。しかし、合コンじゃあるまいし、警視の返答に意味がないはずはない。早く答えを知りたいと逸る気持ちを抑えつつ、撤退を開始した昼間と同じように忌憚無き意見を述べる。 「正直、あまり芳しくはないと思います。昼間と同じか、むしろそれ以上に。」 「ほう。どうしてそう思う?」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!