~Day4~ another story

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「まず何より、逃げ道がありません。警察署は外周360°をぐるりと奴らに取り囲まれ、蟻の這い出る隙間もなく、まさに俺達は袋の鼠ですよ。」 「ふむふむ。しかし、我々が進入した地下下水道があるぞ。それはどうなんだ?」 「確かに、あそこなら奴らを掻い潜って署の外に抜けることができます。しかし、ここには俺達だけがいるわけじゃありません。奴らから逃げてきた一般市民を合わせ、膨大な数の人たちがいます。あの細い道を使ってこれだけの人数を移動させようとすればどれだけ時間がかかるか分かりませんし、何より抜け出たところで大人数を奴らに気付かれることなく安全圏まで逃がす手段がありません。結局同じですよ。」 俺の答えに対して警視は満足そうに頷いている。その挙動が俺の意見の正しさを肯定しており、何だが少しだけ嬉しくなる。いや、肯定されても全然嬉しくない意見なのだが。警視の問いはまだ続く。 「では籠城はどうだ?いくら市長・知事からの派遣要請がなくとも、ここまで暴動が大きくなり警察が機能しないとなると、総理大臣も自衛隊の治安出動命じざるを得なくなるし、体裁を気にする国会議員も活動継続の決議を承認せざるを得なくなる。そうなればいずれ救助の手も回ることにはならないか?」 「それは……ないでしょう。そもそも東京を始めとした大都市で感染?が拡大し、警察機能も麻痺し始めている今、警察よりももっと濃密な集団生活を営んでいる自衛隊自体が無事であることが甚だ疑問ですし、仮に無事であったとしても、救助が来るまでここは持ちませんよ。」 「ほう。その理由は?」 「まず物資がありません。多少の備蓄はありますが、収容限界を超えて集まった人々を何日も養うだけの余力はありません。次に、というかこれが一番の理由ですが、フェンスが保ちません。警視も御覧になったと思いますが、外の様子があれでは……。」
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