~Day4~ another story

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通信室を出た後、俺達は武器庫に来る前に一度屋外に出て周囲の状況を確認していたのだが、そこで致命的な欠陥を発見してしまっていた。それが、正門周辺を中心として奴らの足元に形成された踏み台と、莫大な数の圧力である。 前者については話を聞いていないため推測ではあるが、おそらく奴らがここまで集結する前段階において、門扉に集まり始めた奴を殺したのであろう。その死体がフェンスの下に積み重なり、後続の奴らのための肉の踏み台となってしまっているのである。足元の死体の数と最前列にいる奴の身長によるが、場所によっては既に頭一つ分フェンスを飛び越している奴もいた。 奴らにそれが可能な知恵があるのか否かはさておき、ここまでくればフェンスをよじ登ることも可能であるし、後ろからの押しに耐えられずこけるような奴がいれば、さらに踏み台は高さを増し、頭からフェンスの内側に転がり込んで来る奴も出るかもしれないのだ。 次に後者については一目瞭然であった。100人単位からなる人間が今一斉にフェンスに向かって殺到してきているため、その圧力に耐えかねてフェンス自体が嫌な軋みを上げ始めているのである。さらに、これは聞いた話だが、避難民の収容を打ち切った後に締め出された者達が何とか中に入ろうとしてフェンスに色々やったらしく、所々に亀裂が生じているらしいのである。その補強をしようにもフェンスには奴らがベッタリと張り付き、その全ての菱形に指を絡めているため手も出せず、フェンスの決壊に備えてやばそうな所の前にバリケードを作るのが精一杯なのだそうだ。俺達が署に着いて最初に遭遇した男性職員も、その作業に当たっていたのである。こんな状況から、籠城はおろか、奴らの侵入を拒むことができる限界すら刻一刻と迫りつつあるのであった。 俺の意見と問いかけに対して、またも警視は満足そうに一つ頷き、口を開いた。 「その通りだ。ここももってあと一日、二日だろう。つまり我々が生き残るためには何としてでもここを脱出する必要がある。」 「それはそうですが、一体どのようにしてですか?一般市民を残し、我々だけで逃げるなんていうことはできませんよ?」 質問に質問を返され、その質問に答えた結果、当初の問題に行きついてしまった。答えの出ない堂々巡りに、困惑が心を支配していく。諦観にも似た眼差しを警視へと向ければ、それに応えるように警視はまたも頷く。
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