~Day5~

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次に二つ目が、暴動が長崎以外にも飛び火したということである。日本全国の大都市において長崎と同様の暴動が発生しており、特に大阪、東京では既に大規模なものにまで発展、今も警察庁、警視庁が鎮圧に全力で当たっているというのである。全く違う場所で、同時多発的に同じような暴動が発生するなどということは普通に考えてはまずあり得ず、この点も今回の暴動の不可解さと非現実感とに拍車をかけているのである。 そして最後にもう一点。それがこの暴動を最も際立たせ、またその異常性を如実に表しているといえるのであるが、その信憑性には疑いが強く、テレビと並行してネットを見ていた一郎自身も巻き込まれた人が見間違えたものだろうと決め込んでいた。今もまた報道特番を組んだテレビからオブラートに包んだその情報がテロップで流されており、それを先程から眺めている一郎も、ついつい独りごちてしまう。 「事態が酷いのは分かるけどさ、さっきから暴動の参加者が周囲の人間に暴行を加えるおそれがあるため近づかないようにって流れてるこれって、暴徒が人間喰ってるって例のあれのことでしょ。確かに暴徒自身は興奮してて危ないかもしれないけど、流石にそれはないだろうに。嘘くさいわ。」 暴動発生からこっち、ネットを中心に実際に暴徒に遭遇した人の、生の目撃情報がさかんに上がっていたが、その内容の中心となっていたのが、「暴徒が人を喰っていた」ということであった。この情報が流れ始めた頃から、ネットでは大いにこの事件が取り沙汰され、いわゆる祭り状態となるに至っていた。 しかし、その内容の大半は、ゾンビキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!、とか、【第二の】ゾンビになったけど質問ある?【人生】、とか面白半分のものばかりであり、中には確かに迫真の体験談もあるものの、どうにも全体として胡散臭さが滲み出るものばかりであって、今一つ信じるには不足したものと言わざるをえないのであった。 「とりあえず、今は何もできることはないよなー。警察に任せて事態が落ち着くのを待つしかね。それまでは仕事も何もできないし、ぶっちゃけ暇だな。やっぱ部長の将棋みたいに、趣味の一つでも作っておくんだったな。普段爺臭いですよとかいってごめんなさいだね。」
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