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「で、どういう事なの義鷹?」
移動先の教室で改めて義鷹に尋ねる。いきなり現れてどういうつもりなんだろう。
「いやね、お嬢の頼みで実情調査をすることになったんすよ」
ニヤニヤしながら義鷹が答えた。月兎の仕業だったのね。昨日話してみて性格はひねくれてると思ったけど、ここまでとは予想外。
「あらあらあら? 鈴、須美津君と知り合いなの!?」
めんどくさいやつが入ってきた……薫だ。一々弁解しないといけないし、薫は中々納得しない。
「あっ…言っとくけど只の知り合いだからね」
とびっきり嫌な顔で言ってみせる。できる限り、考え得る範囲の嫌な顔。
「そんな露骨に嫌そうな顔されると困るでさー……」
義鷹がガクッと肩を落とす。
「あら……楽しそうね鈴?」
後ろから声がして振り返る。そこには今一番私を悩ませる人物が居た
「あっ…由里子」
私は思わず彼女から視線を逸らして言った。
「あら嫌そうな顔しないでよ…親友でしょ私達?」
クスクスと笑いながら由里子は言う。それもとびっきり意地悪そうな笑みで。
「あー……もしかして」
「えぇ……」
義鷹がバツが悪そうに言い、私は小声で答え頷いた。
「何をこそこそ喋ってるの?」
由里子がとびきり不機嫌そうに言った。
。
「あー……別に――」
キーン、コーン――
弁解しようとした時にちょうど予鈴が鳴った。救いの鐘なのか試合終了のゴングなのか、とにかく助かった。
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