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町から外れた場所に有る「月兎薬品店」という看板の掛けられた古ぼけた店。そこでは、普通では有り得ない事を解決してくれるらしい。
「らしい」と言うのは、全て聞いた話による物だからだ。
私は、噂を聞きつけ確かめるため店を訪ねた。
噂では、店員に「春風を呼ぶ薬をください」と尋ねると薬屋から相談へと切り替わるらしいが……
「ごめんください」
そう言って扉を引いて中に入る。中は外観に比べて随分綺麗で新築のようだ。
「いらっしゃいませ」
奥から店員と思われる青年が出てきて、営業の初歩であるお決まり文句を言った。
「…あ」
出てきた青年は、所謂「美青年」もしくは「イケメン」と呼ばれる種類の人間で見とれてしまう。
どこか儚い印象の、私の周りには居ないタイプの格好良さが有る。……何恥ずかしい事を言ってるんだろう。
「何をお探しでしょうか?」
「あっ! 春風をよよぶ薬をくださいっ!」
待っていた言葉を聞き、何度も練習した返事を返す。しかし店員は黙り込む。
しばらく沈黙が流れた。もしかして…いやもしかしなくても自分は、やらかしたのかもしれない。ここが関係ない店なら、自分は相当痛い子だ。
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