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暫く頭の中で、そんな事をぐるぐると考えていた。すると暫くして店員が口を開いた。
「ご依頼に来た方でしたか」
彼は微笑んで言った。良かった、噂は正しかったらしい。すぐさま椅子を出して座るように促してくれる。
「只今、店主を呼びます」
そう言って店員は、店の奥へと入って行った。
*****
暫く待っていると、奥から店員が一人の女性を連れて出てくる。店員はドアを開いたまま女性が出て来るのを待って、音をたてずにゆっくりと閉める。
「お待たせしました。この方が店主の……」
「いいよ久良木、自分でする。それよりお茶を頼むよ」
「解りました」
どうやら店員の名前は久良木と言うらしい。久良木……何だか不思議な名前だ。
「初めまして、店主の十六夜月兎です。お嬢さんのお名前を聞いても?」
――十六夜月兎。
そう名乗った彼女は、カウンターに肘を乗せ頬杖をつきながら私に尋ねた。
「くっ……楠木鈴です」
「どこで聞いた?」
「噂を耳にして来ました」
「噂だけで来るって、余程深刻みたいね?」
「はい……」
月兎は呆れたように「ふう」と息をついてから考え込む。
そう、今は藁にもすがる想いで……解決しなければ、夜も眠って居られない。
「じゃあ詳しく聞かせて」
月兎がニコッと笑う。
「はっ……はい!」
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