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「…」
「どうしたんだい、お嬢さん?」
不思議そうに月兎がこちらを見て言った。もっとも、今不思議なのは私の方なのだけど。
「いや、久良木さんの方が年上でしょう? なんで月兎が店主で、久良木さんに敬語使われてるの?」
そもそもまだ学校に通っていてもおかしくない外見、幼く見えると多く見積もっても明らかに久良木さんの方が年上だ。
「……はっ?」
「……これは困りました」
月兎は意味が解らないという顔で、久良木さんは控えめに、だけど我慢できないといった感じでクスクスと笑っていた。
「……?」
予想外の二人の反応に、私は頭の中にハテナが沢山浮かび混乱した。
「悪いけどさ、私はお嬢さんより年上だし久良木より年上だ。もっと言えば、伊能忠敬より杉田玄白より足利義満より年上だ解ったか」
鬼気迫る勢いで、徐々に徐々に乗り出して月兎が私に迫ってくる。
「……」
久良木さんに視線を送ると、久良木さんは「そうですよ」と口だけを動かした。
「解ったら敬いなよ。間違っても、月兎とか呼び捨て禁止。そうだねイ・ザ・ヨ・イ・さんと呼びなさい。解ったかい? イザヨイさんだからね」
口を酸っぱくして月兎が念を押して言う。
「お嬢も災難っすねぇ」
「でも、月兎見た目女の子よ? 明らか年下だもん! 久良木さんは明らか、年上って感じだし。」
間違っても月兎は「さん」を付けるような見た目じゃない。
もっと言えば義鷹やわたしより年下だと思う。仮に店主だとして、お金持ちのお嬢様だとかで店主をしてるに違いないと思う。
「あはは…人を見た目で判断するなって、学校で習わなかった? 習ったのに理解できないなら、頭要らないよね? 叩き割る」
どこから出したのか餅つきの杵のような物を振り上げ、身体から黒い邪気のようなオーラを出しながら言った。
「鈴さん月兎があんな感じなんで、今日の所は……」
月兎をなだめながら、久良木さんが言った。
「じゃあ鈴の字明日からクラスメート頼むっすよ」
義鷹がそう言った。怒ってる月兎を気にしてないようにふたりとも話している。馴れているという事だろうか?
というより明日からって可能なのかな?
「じゃあ、お邪魔しました」
「待てこのガキー!」
後ろで月兎の叫ぶ声がしたけれど、待ったらなにをされるか解った物じゃないから、そそくさと立ち去った。
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