君の目が

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「…何、人のことジロジロ見て。やっぱりそっちの気あるんじゃないの?」 「だからないって!」 「ふうん」 「…あ、俺降りるわ」 「じゃあ僕も」 「は?なんで」 「君と話してると、楽しい」  意味が分からん。一人暮らしなら、河菱にとって時間やらの問題はない訳だけど。だってこいつと帰り道ずっと一緒だよ?疲れること前提じゃない? 「心配しなくてもいいよ。いつもこの駅だから」  …お前の心配してない。 ▼▼▼  駅につくと、電車が大きい口を開け、人波を吐き出した後、また吸い込んでいく。俺達は何も喋らず、沈黙のまま地上に出た。  ここで、沈黙を破ったのは、河菱だった。 「寒い」 「ああ」  他愛ない事だった。ただ呟いただけかもしれなが、一応相づちを打った。  冬ってこんなに寒かったんだっけ?と、一年ぶりの冬の到来に戸惑いながら、鞄から紺色のマフラーを取り出し、鼻が隠れる位置で巻く。
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