プロローグ

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この頃の高校生はちょっとしたことに反応する。 部屋にもノックせずに入ると、怒られる。 干渉すると、直ぐ「ウザい」や「キモい」と言う。 繊細、と言えば聞こえは良いが、親から言わせれば只のめんどくさい反抗である。 法子は法律や倫理を逸脱しなければ、別に何をしているからと言って深く干渉するつもりはない。 17年間その方針を変えたことは1度だってなかった。 そして、これから先も変えるつもりもなかった。 海斗はたまに寝起きが悪い質がある。 最近はそれが一層頻繁に見られる。 しかし今日は違った。 法子のノックに対して、扉の向こうから「はいー」と単調な返事が聞こえた。 その声に法子は一瞬驚いたが、「朝ご飯できたから早く出てきなさい」とだけ言い、扉から離れた。 キッチンに戻りながら、法子は「何かあったのかしら」と考えた。 しかしそれを長く続ける訳もなく、すぐに日常に戻った。 と言うよりも、戻らなくてはいけなかった。 主婦の日常というのはそういうものだ。 法子のように働いている主婦は尚更である。
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