プロローグ

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そうこうしてる間に、出勤時間になっていた。 気付かぬ内に、海斗は学校に出ていた。 当然、挨拶も教えてきた。 しかし、あまり朝に強くない海斗はどうも朝の挨拶だけ出来ない。 と言うより、そもそも朝は一言も喋らない。 学校に行って、漸くエンジンがかかるらしい。 事実、学校でのテンションが、朝のそれよりも高めなのを何回も見ている。 なので、法子はそのことに関しては暗黙の了解で何も言わないことにしている。 彼女は夫に書き置きを残し、車のキーを手に取り、家を出た。 時間的にはあまり余裕はない。 階段を駆け降り、マンションの駐車場に出る。 止まっている幾つかの車の脇をすり抜け、奥にある軽ワゴン車に乗り込む。 キーを入れてエンジンをかけ、すぐにアクセルを踏もうとする。 だが、サイドブレーキを下ろし忘れていたことに気付き、動き止める。 ――気ばかり焦っても仕方がない。 冷静になりしっかり確認すると、改めてアクセルを踏んだ。 今しがた走って通った車の前を再び通り、道路へ。 最近は通学路等の影響で一方通行の規制が増えたが、実際のところあまり守られていない。
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