『一章 盗まれた髪飾り』

2/11
前へ
/83ページ
次へ
「む、客か?」 スサノオは玄関に見慣れない靴があることに気付き、言った 「ああ、アマテラスの部屋にいるよ」 返事をしたのはツクヨミ。やたらイケメンである 「へぇ、誰?」 「ヤゴコロさ。別に大した用じゃないだろう」 ──── 「へぇ、最近また『あいつら』が」 アマテラスは煎餅をかじりながら言った 「そうよ、私の本だって盗られたんだから」 ヤゴコロは頬を膨らませて言った 「・・・そうね、『あいつら』ならツクヨミに任せれば充分よ」 「あら?ツクヨミはそんなに争い事は好きじゃなかったんじゃ」 「大丈夫よ、『あいつら』はツクヨミの大好きな・・・」 「・・・ああー」 ヤゴコロはにやりと笑った ───夜 「って訳でツクヨミ。ヨロシクね!」 アマテラスはツクヨミの肩を叩いた 「えー・・・用するに『酒呑童子』から本を取り返せ。と?」 「そうよ。簡単でしょ?」 「やだよ。あいつら鬼だろ?どんな奴か見たことねーし」 「私は見たことあるけど害は無さそうよ」 「・・・害がないなら行く」 「頑張ってね~」 ──── 「天姉、どうして月兄に行かせたの?」 「フフフ・・・酒呑童子はね・・・」 ─── 「おお・・・おおお・・・!」 ツクヨミは嬉しそうに声を上げた 目の前には 「おお!いい指輪!」 「ダメだよお兄ちゃん。イヤリングにしようよ」 小さな男の子と女の子がいた 頭には鬼であることを示す角が生えている 「じゃあ、早速・・・」 「────かあいい!」 「ひゃう!?」 ツクヨミは二人の鬼を抱き締めた ────── 「酒呑童子の容姿は小さな子どもでね。ツクヨミの趣味と一致するんだ」 「ああ、確かに月兄の子ども好きは異常だね」 がらり 玄関が開けられる 「やあ、帰ったよ!」 ツクヨミの両脇には眠ってしまった酒呑童子がいた 「遊んでたら眠ってしまってね。連れて来た!」 「連れて来た。がワケわからない。また面倒事を・・・」 アマテラスが悩ましげに頭を抱える 「まぁ冬だし外に放って置くのも可哀想だったしな」 「・・・まぁ天姉、寝かせる位支障は無いでしょ?」 「まぁ無いわね」 「天姉が働いてくれればいいのに」 「やだ面倒」 「とりあえず布団を敷いて寝かせるよ」 押し入れから布団を取り出し、酒呑童子を寝かせた 「ところで盗まれた本は?」 「ああ、コイツの風呂敷のなかに・・・あった。これだろ?」 「なんの本かしら」 アマテラスが本を開く 徐々にアマテラスの顔が赤くなる
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加