守護体

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それは夕食時の事。 「李麗、家に来ないか?」 「お前ん家?」 不意に今迄聞こえて居た包丁がまな板を叩く音が途絶えた。見ると鏡夜が調理の手を止めてこちらを凝視している。別からも視線を感じ、振り返ると準夜もテレビからこっちに視線を移して居る。 …視線云々を除くと異形が近くに居るのと酷似した感覚だ。李麗と李麗の母は大輝の言葉の続きを待って居た。 「大輝?」 「あ、うん。ほら明日から夏休みだろ?一学期中ずっと李麗の家にお世話になってたから…」 何故だろう。後ろめたい事は一切してないのに冷や汗をかいて居る…。 「気にしなくていいのに…」 「そうよ?大輝君のお陰で助かってるんだから」 李麗の成績が。大輝は思わず苦笑した。 「祖父一人なんでたまには顔出して置いた方がいいかな…と」 「で、何処なんだ?」 「山」 「行く!」 李麗の目が輝いた。剣幕に押されて大輝は椅子から軽く落ちかける。あ…と李麗は切り出す。 「遥菜は?」 プツンとテレビの画面が消えた。準夜が電源を切ったのだ。 「ん…かなり離れた所だから行けないらしい」 「そっかぁ、まぁ遥菜じゃ山はキツいな」 李麗は完全に行く気になって居る。 「かなり離れたって事は片道はどれぐらいかかるのかしら?」 「此所からなら…三時間半ぐらいです」 母も同意同然の顔をして居る。準夜は溜め息を付き、リビングを出る。再び包丁の音が始まる。 「準ちゃん?もうお夕飯よ?」 「時間になったら降りて来ます…」 よろよろと部屋を出て行く弟を見送ったあと 「…凖は山盛りだな」 と、鏡夜は包丁の手を早めた。
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