守護体

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その時だ。 『アァ!』と烏の鳴き声が山に響き、背後から空気がはぜる音がした。 「雷!」 バチリと電撃が走る。鋭い痛みと痺れに李麗は気を失う。次いでか細い断末魔を上げ、脚に絡み付いた異形が姿を消した。 「危機一髪、と言ったところかのう」 「爺ちゃん…」 しゃがれた声に振り向くと額まで見事に禿げ上がった白髪の老人……広神光輝、大輝の祖父が大きな烏を肩に止めていた。 やがてあちこちから鳥や生き物の気配がする。異形はこれで終わりの様だ。 「なかなかめんこい娘じゃの」 李麗の顔を覗き込み、次いで大輝の顔を見て小指を立てる。大輝は溜め息を付き、しまって居なかったトンファーで祖父の頭を小突いた。 「――麗、李麗」 大輝の声に目を開くとダークブルーの髪が視界に入る。何処かから柊護の枯れた声が聞こえた。 「俺…そうだ、異形は!?」 勢い良く起き上がろうとして李麗はよろめく。身体に力が入らずその場に座り込んでしまった。 「異形はもう消したよ」 「悪ぃ…」 申し訳なさから李麗は素直に頭を下げた。 「痺れとか残ってるか?」 「や、大丈夫」 大輝が李麗を助け起こしてやると大小の烏が二人の前に降り立った。柊護が鳴くと応える様に小柄な烏が鳴いた。 「ちっさいのは呉射だよな」 じゃ、あの大きいのは?と首を傾げる李麗に大輝は柊護をゲージに入れながら答える。 「零(ゼロ)。爺ちゃんの守護体だ」 大きな烏は二三度翼を羽ばたかせ『ギャア』と鳴いた。
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