守護体

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その日も、空は青かった。 孫の髪も青かった。顔立ちも亡くなった母親にそっくりだ。と光輝は空を仰ぐ。 『光輝、連れて来たわよ』 「零か。うむ、ご苦労さんじゃった」 零に遅れて、もう一匹白い烏が飛んで来る。烏は暫く光輝の回りを円を書くように飛んでいたが、やがて肩に止り腕に抱えられた赤ん坊を覗き込んだ。 赤ん坊は烏を見つめ、屈託のない笑顔を見せた。 「くろっ」 それが赤ん坊…大輝の初めての言葉だった。しかし、誰も記憶に無い初めての言葉となった。何故なら… その目の前には、異形が居たからだ。 虫の知らせとはこう言ったものなのだろう。仲間の烏達との談笑に混じって居た呉射はバッと背後を見る。 普段と全く変わらない風景に何故か違和感を感じるのだ。 『どうしたか』と呼び掛ける声を無視し、呉射は真先ぐに迷う事なく飛んでいった。 それは黒い影の様に見えた。しかし、立体の影なぞ見た事がない。大輝に向って爪を振り下ろした異形目掛けて呉射は降下した。 不思議と、恐怖はなかった。
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