守護体

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『大輝!』 何かが爪に食い込んだ感触。その先で得体の知れない悲鳴。見ると影(異形)が地面に溶ける様にして消えるのが見えた。 『…大丈夫?怖くなかった?』 呉射の心配を余所に大輝はニッコリ笑い、呉射を眺めた。その細まった子供の目が驚愕に見開いたのは次の瞬間。 自分の体を貫く光の矢。 認識があったのは痛みではなく、脱力感。 まだ言葉を上手く発しない、子供の声を耳に呉射は地に自身が落ちるのを感じた。 「この烏で最後かしらぁ」 間延びした声と共に少女が出て来る。真っ黒なストレートヘア。トーンの高めの声に対してその瞳は冷たく、手には光を帯びた弓を持っていた。 「終わったわよ、直ちゃん」 【直ちゃん】と呼ばれ、振り向いた少女の先に立っている少年は地面から顔を上げた。 「…その子供はどうした、姫百合」 「お前、また拾って来たのか」と溜め息を吐く少年に姫百合は頬を膨らませる。 「姫が好きなのは女の子よぅ。此所に居たの。姫が来た時にはもう居たもの」 「…記憶操作は必要ないか。これだけ小さければ、記憶も定かじゃないだろう」 「じゃ、戻ろう」 悠々と去って行く後ろ姿を幼い大輝は呆然と見つめて居た。 『呉射……!呉射!』 芯のある、凛とした声に呉射は目を開く。艶のある、漆黒の体…ふと感じる違和感に首を傾げる。 『貴女は…?』 目の前の烏が慌ただしく羽ばたく 『……覚えて、ないの?』 呉射の反応の意味を理解した瞬間、零は頭が冷えていくのを感じた。
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