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「この調子ならあと三匹はいけるぜ」
「よしなさい」
息巻く李麗をいさめて、大輝は魚を川に返してやる。魚は水底をなめらかに泳ぎ、やがて姿を消した。
「……!」
遥菜の表情が強張る。
二人も異変に気付き、動きを止めた。
川のせせらぎ、あれだけ喧しかった蝉の声が。途絶えた。
「ヘイダルム!」
地面から光を纏った巨大な鎧が出てきた。目前まで迫った衝撃波をなぎ払う。突然目の前に現われた物体に思わず大輝達は遥菜を見る。
「大丈夫?」
遥菜が慌てて振り向く。どうやら視線を勘違いしたらしい。
「何だよ。コレ」
李麗が鎧を指差す。
「…盾…かな」
後半は自信なさ気に消えた。
「大輝君達、出せない?」
「いや、武器しか」
こうして会話して居る間にも、鎧が攻撃を受けている衝撃音が聞こえる。李麗は段々不安になり遥菜に聞いてみた。
「それよりよ。このヘイ何とか何時迄保つんだ?」
「あ、もう…大分危ないカモ」
見ると鎧がうっすらと透けている。ヤバい。これは遥菜でなくともわかった。
「散れッ!」
大輝が叫んだ。
瞬間ガラスが割れる様な音と共に鎧が光になり、キラキラと川に散った。
李麗は手頃な石を拾い上げ、槍を召喚する。大輝も手の平に力を込め、同様にトンファーを召喚した。
「ヘル」
光の輪が遥菜をとり囲む。遥菜が光をゆっくりと掴むと光は形を変え、大鎌になる。
「行こう」
「ったく、最近多くて嫌になるぜ」
鎧があった場所に異形がたまって居た。こちらにゆっくりと(異形は基本的に早くはない)近付いて来る。
得体の知れない不気味な声。地の底からの呻き声、とはこんな感じなのだろうか。
……三人はそれぞれのスタイルで異形に向って行った。
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