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まず目に入ったのは白い天井。耳に飛び込んだのはテレビのお笑い芸人のコント。
「こ、こは…」
「おう、気が付いたか」
耳に飛び込んで来た声に、嗚呼、さっきの声だ。ぼんやりと大輝は考える。不意にカラン、と水に氷の浮いたグラスが視界に飛び込んで来た。
「おきれるか?」
「君は」
誰?と聞こうと口を開いたが『ミァァアッ』と言う猫の鳴き声(悲鳴と言っても過言では無い)に綺麗にかき消されてしまった。
「おい、柊護(しゅうご)!どうした」
ドタタタタタと凄まじい音と勢いで一匹の猫が走って来た。白い毛玉、という呼び方がシックリくる真っ白なチンチラ。
興奮したのか、長い尻尾がこれでもかと言わんばかりに膨れ上がっている。
「まぁた踏まれたな」
そう言って猫を抱き上げ、大輝に向ってニッと笑ったのは…栗色の髪を項で高々とポニーテールした少女だった。
「君が…助けてくれたのか」
「おうよ。いきなしぶっ倒れたからびっくりしたぜ」
大丈夫か?再度確認を取って来る少女に返事替りに柔く笑んで見せる。
「今11時だけど学校連絡しとけば?」
「11時!?」
思わずずり落ちかけ、自分が寝かされていた所がソファと言う事に漸く気付いた。
「…君、学校は?」
「サボり」
スパッと答えた本人の顔には何の曇りも無い。当然、といった感じだ。
「アンタ、名前は何て言うんだ?オレ恵野李麗(サトノ リレイ)」
「広神大輝。…そうだ李麗、烏を見なかったか?」
「カラス?」
李麗は嗚呼、と呟くと窓に歩み寄った。庭に通じる大きなガラスでブロックの壁越しに電信柱が見え、電線に烏が一匹留っている。
「あれか?そういやお前運んだ時からずっといるけど」
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