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「柊護、行け」
李麗は柊護の頭を軽く叩く。『ニアァア』と大きく鳴き柊護は異形に向かい走る。
「李麗、まさか…」
その際に繰り出される異形の攻撃を飛び跳ねて躱す。こうして見るとこの公園も相当な広さだと大輝はふと思った。
「先手必勝、行くぜ!」
「ッ待て!」
柊護から乗り出した李麗を止めようとした手は空を掴んだ。
「人が居るんだぞ!」
「グダグダしてて中のヤツになんかあったらマズいだろ?」
そう言い放つと李麗は両手を頭上に掲げる。手のひらに白い光が生まれ、炎へ変わる。
「炎!」
異形の全身を炎が舐める。異形から火が引いたと同時に李麗の顔から余裕が消えた。
異形は微動打せずに彼らの視界に映っている。異形の長い腕が李麗の腹に一撃を食らわした。
「李麗!」
子供が投げた玩具の様に李麗は吹き飛び、砂場に頭から飛び込む様に突っ込んだ。
砂がぶぁっと舞う。
「柊護」
今度は大輝が柊護の頭を軽く叩くと自分は飛び降り、李麗の元へ向かわせた。異形の腕が柊護を追い素早く伸びる。
「させない」
異形の背後に回り込みながら大輝は左手に意識を集中させる。手のひらからパチリと音が漏れた。
「雷(ライ)!」
白熱した光と共に轟音が鼓膜を震わす。渾身の技だったのだが異形の様子を確認する事はならなかった。
大輝にとって術を放つのは奥の手であり、最後の手だ。文字通り『渾身』。大輝は片膝を付いて異形を見上げようとして…固まった。
異形に取り込まれた少女と…目が、合ったのだ。
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