第二十六話

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“行け” その一言だけだ。 「ああ、早くこの状況をなんとかしなきゃいけねぇしな」 待っていても滅びの時は迫るだけ。 同じ道を失敗したら歩むことになるだろう。 だけど何もしないで諦めるよりはマシだ。 「ありがとう……」 「何だよ?急に……」 亜由美の突然の礼に一馬は意味が分からず真意を問いかける。 「ただ……言いたかったの」 そう言って亜由美は一馬の方を見ながら薄く笑いかけた。 (貴方は……私を恨んでいるハズなのに……いや……高橋君だけじゃない。みんな私を恨んでいるハズなのに……誰も誰一人憎しみに負けなかった……本当に凄い人たちね……だから……この一言だけは言いたかった……) 亜由美はその想いを心だけに終い、核の増幅する場所にまた目を向ける。 「行くわよ!!」 「ああ!!」 亜由美の呼びかけに強く頷く一馬。 「待って一馬、未夢も行く!!」 行こうとした二人の前に急に現れたのは未夢だった。後ろには太一もいる。
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