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答えは、出なかった。
女の子は靴底に踏まれて、太陽の光でひからびたミミズを暫くぼうっと見つめていた。
からかっていた男の子たちも、興味が薄れたのか女の子から離れていく。
(……どうしてかな?どうして、人間は自分以外のものを食べちゃうのに他の命を大切にしろって言うんだろう?)
やがて、一人になった女の子の頭に浮かんだのはそんな単純なことだった。
単純だけど、答えは出ない――
そんな疑問だった。
そして、女の子は大人になる。
その想いを抱えたまま、女の子は少女になった。
少女は何不自由ない生活を相変わらず続けていた。
特段裕福でもなければ、不幸でもない。
家族にも恵まれているし、友達も多い。元々正義感と責任感が強かった少女は学校でも目立つ存在になっていった。勉学もスポーツも何事も本気に取り組んで、誰からでも信頼されるようになっていた。
少女は毎日を有意義に生きて、満足な日々を送っていた。
誰もが羨むような存在ではないにしろ、誰も少女を不幸と呼ぶ者はいないだろう。
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