プロローグ

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欲望は、形となって、実現した。 ――力が欲しいなら、僕が与えよう。だけど……全てを幸せにしたいなら、全てを捨てる覚悟を持て―― あの時と同じ声が少女に呼び掛けた。 少女は光に手を伸ばす。それが希望の光だと信じて―― あの時から、少しは自分が変われたのだろうか…… 少女は薄く自嘲する。 そうやって笑っても未だにあの時の答えは出なかった。 相棒は言った。 ――万物が幸せになるには、全てが無に還るしかない―― と。そしてこの世は悲しみや苦しみに満ちている……それに自力で打ち勝つ力など全ての生き物に存在しないのだと。 全てが無に還れば、この悲しみや苦しみは終わるのだと相棒は教えてくれた。 少女は目を閉じて、そっと考える。 自分は正しいことをやっているのか……?と―― 「……今更、何を考えてるのかしら……私は…」 「……どうした?」 相棒は自嘲で顔を伏せた少女を気にして、声をかけてくれた。 「なんでもないわ。大丈夫よ」 そんな優しい相棒を心配させまいと少女は微笑を見せる。
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