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「そうか……ならいい」
相棒は短く少女に返してくれる。
「……ねえ……ゼウス、私がやろうとしていることは本当に正しいのかしら?」
いつの間にか少女は弱気な言葉を相棒に口にしてしまった。
相棒は暫く間を置いて、答える。
「……君はどう思う?」
「?!」
相棒は少女を叱咤するわけでもなく、平坦な声で聞き返した。
「……ここまで付き合って来てくれた君に今更こんなことを言うのはおかしいかもしれない。ただ……君の意見が知りたい」
声は平坦だが、はっきりとした口調で少女に質問を繰り出す。
「……私は、ずっと誰もが幸せになれる答えを探してきたつもり。
この世界がなくなることで本当に悲しみも苦しみもない世界になるなら……
後悔はしないわ」
少女は真っ直ぐに前を見ながら、相棒に答えた。
「……昔、同じことを異界でしようとしたことがあった……」
何を思ったのか、相棒は突然昔話を始めた。
「…全ての世界をなくす為に僕たちの住む世界を生け贄にしようとした」
相棒は優しい声だったが、何処か寂しげだった。
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