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「ロン。対々和だ。」 「ドラもあるじゃねぇか。こりゃ高くつくぜ。」 チッ 空になった財布を片手に凍えた空の下を歩いた。 東の海を見るとすでに灯台下明るしだった。 新聞配達の学生は、薄手の手袋を口元にあて、白い息を吐き出していた。 赤い自販機が見えた。 彼はもう朝のひとときを味わうことすらできなかった。 いつもは20分はかかる帰路を今日は15分で歩いた。 大家さんがまるまる太ったごみ袋を両手に抱え、やせ細ったおれを見た。 無感情な言葉を交わし、二階の隅の扉を開けた。 乱雑に散らばった生活用品は 男が一人、十分に横になれるだけのスペースを与えていた。 禿げたい草の板の上で、空になった男は眠りについた。 男の名は、金田 槙 といった。
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