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2月、男の隣に若い女が引っ越してきた。 「こんな時期に珍しい。」 男は挨拶に来た女に言った。 感じがよく、甘い香りがした。 背丈はおれの肩ほどで、栗色の長い髪を几帳面に結び、やっと一息ついたというような安堵感に満ちた顔をしていた。 目は大きく、白いほほは赤らんでいた。 聞くと女は近くの短大に通っていて実家に暮らしていたが両親の不和から一人暮らしをすることになったのだ、と言った。 つまらないことを聞いた、とおれは返した。 女は、構わないと言い粗品の洗濯用洗剤を置いて帰った。
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