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「あのさ」
「何?」
少し落ち着いた所で俺は話を切り出した。
「歌ってたのってキミ?」
「そうだよ。なんで?」
「俺の言葉じゃ言い表せないけど、とっても暖かくなったって言うか……心にグッと来た。俺は歌とかあんまり好きじゃないから、宛にはならないけどね。ってどうしたの!?」
俺が話している途中でその女の人はいきなり倒れた。ちゃっかり脇に抱えていたギターは、いつの間にか地面の上に置いてるけど。
「大丈夫か?」
俺は女の人の頭を抱えて自分の膝の上に乗せようとしたが、制服が濡れていることを思い出して、近くのベンチの上に寝かせた。勿論女の人が濡れないように気を付けながら。
何故かニット帽からはみ出した顔は真っ赤だ。風邪かな? アワワ…なんて言ってるし。
しばらくして女の人は顔を起こした。
顔の色はもとに戻っている。相変わらず顔は見えないけど。
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