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雨は相変わらず降り続けていた。
俺はその中をびしょ濡れになりながら歩いている。
涙なんて枯れた。
冬美が悠斗の事を好きなのは薄々解っていた。でも実際に本人の口から聞くのとは違う。
こんなに苦しいなんて知らなかった。出来るなら知りたくなかった。
でもそんなの綺麗事だよな。自分だけが傷付きたくない。自分だけは幸せでいたい。
どれもこれも綺麗事。
ホント、哀れで惨めだ。
「…ってあれ?ここどこだろ?」
顔をあげるとそこにあったのは見慣れない景色。いつもは通らない道。
そしてしばらく歩くと、寂れたアーケードが見えた。近くにショッピングセンターが出来た精で、廃れてしまったらしい。
少し遠回りになるけど通ってみるか。
びしょ濡れになった制服を絞り、アーケードに足を進める。そこに見えるのはシャッターばかり。昔の栄えていた様子はすっかり色褪せていた。
今の俺みたいだな。なんてキザすぎる考えが頭をよぎった。
もう俺病気だわ。自分でもそう思う。
そんな時、何かが聞こえた。
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