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俺は勢いよく角を飛び出す。
「……って、あれ?」
しかし、靴が濡れている精で勢いよく転ぶ。世界が暗転するとはこの事を言うのか。
そして後頭部を金槌で叩いたような衝撃が俺を襲った。
「…………ッ!!」
声にならない痛みに俺は地面をのたうち回る。目の前がチカチカしている。
なんというか、不幸だ。
その時誰かが俺に声をかけた。
「…大丈夫?」
その声は透き通っていて優しい声、つまり女の人の声だった。
「………大丈夫だ。多分」
俺は何とか身体を起こし、背後にいたその人の方を見た。
その女性は脇にギターを携えていて、深々とブカブカなニット帽を被っていた。
いや、言葉遊びとかそういう類いではなく。本当に深々とブカブカな感じで。
お陰で顔はよくわからないけど。
「本当に大丈夫?もうちょっと横になってた方が良いんじゃない?」
その人は自分の事のように親身になって心配してくれた。
それが今の俺には眩しかった。
「大丈夫だって。これぐらい」
俺はその人に大丈夫さをアピールするためにニッと笑顔を作った。
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