6人が本棚に入れています
本棚に追加
「……でも制服びしょ濡れだし」
「えっ?」
俺は自分の制服を見る。忘れていたが今の俺は雨でびしょ濡れ。
まあ。あれだ。
変態チック?
…って、このまんまじゃ変態って事になるじゃん。それは避けたい。
「いやー。いきなり降ってきてね。傘持ってなくてこのザマだ。ハッハッハ……」
俺は笑って誤魔化す事にした。そしてちゃっかり制服の裾を絞る。
そしたら目の前の女の人は肩を揺らして笑い始めた。
俺のことを馬鹿にしていらっしゃるのですかね?
「キミ面白いね。なんか、可愛いよそれ」
その人は綺麗な指で俺の制服を指差した。
可愛いとはこの制服の裾を絞っている事を言っているらしい。
「って、コレ可愛いのか?」
「充分可愛いよ」
「…ま、感じ方は人それぞれだよな」
「…なんか失礼だね。こっちは褒めてるのに」
「馬鹿にしてるの間違いだろ?」
「ホントだってばぁー」
「いや、俺は騙されない」
「素直に喜べば良いのに」
俺たちは目を合わせて笑った。雨のじめじめした湿気も二人で吹き飛ばすくらい大袈裟に。
本気で笑ったのは久しぶりな気がする。何と言うか……、とても清々しい気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!