灰被り姫

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少女はいつものように台所にいた。 湯気のあるスープを4つの皿に分ける。言うまでもなく、彼女の家族が4人だからだ。 分け終えると足になにか当ったのが分かった。 ――バケツだ。 水を張っているのは片付けが終わっていないからだ。少女はこのバケツがなぜここにあるのかを知っていた。 バケツの中の水が、少し濁っている理由も。 少女はバケツに一瞥してから手のひらに収まる程度の欠けた器を持って来た。 次の瞬間、彼女は「それ」でバケツの水を掬った。 ゆっくりと立ち上がった、ちょうどその時。 家中のベルが鳴った。 ――継母たちが起きたのだ。 少女は、その美しい顔立ちに似合わず、舌打ちすると、手に持っていたままの――まだ中身のある「それ」を台所に置き、荒く足音を立てながらベルに近付いた。 ベルは、各部屋に必ずついている。 ――少女は受話器を外した。
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