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「シンデレラ」
少女は呼び止められて振り向いた。呼び止めた相手は継母である。
一瞬、ここ数年してきた悪事がバレたかと焦ったが、そんな筈はない。証拠湮滅は完璧だ、と思い直して笑顔で応える。
「どうかしましたか、お義母様」
少女は静かに微笑んだ。
「ジェニファーを知らないかしら?」
ジェニファーとは、真っ黒で毛むくじゃらの継母の飼い猫である。
よく、掃除の邪魔をするので、少し前に毛をむしって、その毛を暖炉へ投げ込んだところ、ぴたりと嫌がらせをしなくなった利口な猫でもある。
「ジェニファーならお義母様の部屋以外いないと思いますけれど‥」
少女は小首をかしげた。
「‥もし見掛けたら教えてちょうだい」
継母は少女の返事も聞かずに去って行った。
少女はしばし、ジェニファーの行方を想像したが、面倒臭いので止めた。
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