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ふわり、と腕の中に収めた彼の髪の毛が頬を撫でた。
普段は好きなんて感情は持ち合わせちゃいないのに。こんな時ばかり…これが人間のエゴというものなのか。
今だけは、愛しているよ。
そんなこと言わないけれど。
言ってしまったら彼が無意識のうちに上手く使ってしまうから。
「見える?…雲が流れてる」
そんなことしか言えないのだ。
腕の中の彼は、顔を俺の胸に押し付けたまま。見えるはずが無いのに、頷いた。
嗚呼、もう上手く使われている。
気付くのが少し遅すぎた、只それだけのこと。愛しているよ、その時だけは。
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