そこは地獄の底

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闇を一身に受けた様な、漆黒のローブを纏った男は、嫌みったらしく微笑む謎の男を前にその切り刻まれた自分の体から流れる血液で黒いローブを血に染めていた。 「世界を恐怖に陥れた殺人鬼『ダーク・ローブ・マン』君の死はほんの僅かな時間世界を揺るがすだろう、しかしそのほんの僅かな時間が過ぎれば世界は再び回っていく……まるで君は存在しなかった様に」 「クッ、それは俺がこのままいなくなればだろう、終わらねえよ、俺の伝説は」 「いや、終わるんだよ」 ローブの男の前に立っている男は、背中の剣を抜き、弱っているその男を、真一文字に切り裂いた。 当然、その切り裂かれた傷口からは、恐ろしい量の血が吹く。 「あれだけ血を流して、まだこんなに血が出るんだ……殺人鬼だけに血の気が多いねえ」 ケラケラ笑い勝ち誇ったその男に対し、斬られた男はまだ倒れなかった。 「終わらねえ……俺の伝説は」 「いや……終わるから伝説なんだ」 今度こそ本当のとどめ。 ローブの男の心臓を剣が刺し貫いた。 しかしそれでも倒れない。 それを見て、さすがに呆れた表情でこう言い捨てた。 「弔いだ」 近くに咲いていた、ユリを引っこ抜き、ローブの男に向かって高らかと投げつけた。そして、その花が地面に落ちたのがまるで起爆剤の様に。 遂にローブの男。 通称『ダーク・ローブ・マン』はこの世から姿を消した。
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