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少女は、遠くを見ていた。
遠くで、赤が燃えている。
丘の上から見下ろす、かつて栄えた王国は今、火の海だ。
肌を焼くような冷たい風がさあぁぁっと吹き渡り、少女の髪を優しく撫でる。
少女の瞳は酷く淀んでいた。
左目に浮かぶ炎はつよく明かりを燈している。
王国に舞い上がる火は、罪なき国民を容赦なく蝕んでいく。
それが、命令だった。
最初から分かっていたのだ。
自分の意志なんてものは皆無であると。
感情なんてものは、邪魔になるだけなんだと分かっていた。
゙ごめんなさい ごめんなさい゙
゙どうかこの子の命だけは…゙
゙お願いします助けて下さい゙
かつて殺めた人々の悲痛な叫び声が、恐怖に怯えた眼差しが、脳裏をよぎる。
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